2012年 08月 17日

アルプスからの手紙

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大雪渓を見下ろすその場所に、その人は立っていた。

秋道の岩場のルートを行く私たちに 
「気を付けて。まだ先は長いから。」と優しく声をかけてくれた。 


雪渓を歩く人たちの安全を見守り、笛を吹いて落石を教えてくれたその人は 長靴を履いていた。



長靴を履いた郵便屋さん…。


早朝、登山道へと向かうタクシーの中で 運転手さんから聞いた話を思い出していた。

「今日もきっと彼に会いますよ。
 すぐわかります。 長靴を履いているから。
 毎日雪渓を往復し、山頂の山小屋まで郵便を運んでいるのですよ。」


会えるだろうか?


そして思いがけなく出会えたその人は、聞いた年齢よりずっとずっと若々しかった。



その夜、山小屋で絵はがきを買って、母に宛てて短い言葉を書き、山小屋のポストに入れた。


「元気です。 とっても綺麗だよ…。」

天気予報がよくなかったから、きっと心配しているだろう母に。


私の生まれた田舎町は 統合されて、何年か前に住所が変わってしまった。

私は その変わった住所を覚えていなくて、うろ覚えの住所を書いてしまったから
ちゃんと届くか心配だけど…^^;

自分の住所は書いたから、宛先不明で戻ってくるかもしれない。

そしたら、封筒に入れてもう一度送ろう。

白馬の消印のある その絵はがきを…。


もっとも…ちゃんと着いたとしても、下山して「無事帰ったよ」のメールのほうが
はがきより早く着くだろうけど。


私のはがきは あの長靴の郵便屋さんが運んでくれただろうか…。


母からは まだ「はがきが着いたよ」という連絡はないけれど

きっとあの郵便屋さんが大切に運んでくれて 今頃どこかを旅しているのだろう…。






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母へと送った絵はがきは ゆっくりと暮れていく静かなその山の夕焼けの風景だった。


そしてもう1枚。

山に沈んで行く 真っ赤な夕陽の絵はがきが 私の目の前にある。


自分に宛てて 出せばよかったな…と ふと今思う。


白馬の消印の アルプスからの手紙を…。

by m-kotsubu | 2012-08-17 00:39 | 山歩き


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